揺らぐことのない蜜月の時間の中で、恵まれた愛に満たされ、澄んだその甘さを、その温かさを、存分に摂取し、自らの生の、隅々にまで行き渡らせたものたちによる、処女受胎の物語。影は内に秘め続け、生々しさを捉えた言葉さえ、どこか綺麗に響く。
恵まれたその愛を、一雫も残さずに巡らせるよう。不在の性、ただ、自らを見守り、愛する、父親だけが、唯一無二の。互いへの理解と言葉を交歓とし築き上げた、蜜月の清浄さ。白く在り続けるだけの都合のいい無垢さなど、存在しない。多くを知る息遣いを、脈動を、宿してなお美しい、清廉な色がある。外に出されることのない影は、自らを封じ続けた主を、暗く脅かすこともなく、淡く、寂しげに、物語を流れる。熱の艶やかさと危うさを要さぬ受胎の実現、世界は不穏を感じるほどに澄みきっていた。
「ファラダの首」
苦しみや悲しみは語られることさえなく、秘められたまま、誰にも明かすことのなかった愉しみだけ、こっそりと。自分が知る中で、最もかわいくて、最も綺麗なお話。