「私」は語る。不意の喪失が刻む哀しみを、全身を甘やかに支配する痛みを、憎み合い、目を背けようとしてなお、捨てきれぬ存在の息苦しさを。幾人もの「私」は語る。
交わり合う言葉、溶け合う思い。自らの哀しみを、多くの者の哀しみに、多くの者の哀しみを内包した言葉に、寄り添わせ、「私」は「私」との境目を、「私」たちを隔てていた、その境目を失う。
昇華など、されはしない。明快な救いなど、訪れはしない。逃れられぬ生を、不完全なまま、懸命に歩み、もがき続け、だが、「私」が「私」に、寄り添うことで、自らの心を、寄り添わせて行くことで、魂は、ゆっくりと、ゆっくりと、癒されて行く。
美しく偽ることを知らぬ、愛おしき魂の変遷。醜ささえ露わに、形ある救済ではなく、緩やかに光へ、だからこそ、見つめ続けていたいと、心はそう高鳴る。