性を持たぬ魂、ただ愉悦と熱情を求める存在、直に触れ、絡め取られることで、相手は自らの性を、逃れられぬ自らの性を自覚する。敵わぬと、惨めさに沈む。熱く、激しい思いを、その残滓さえ残さず奪って行く、必然の別離。愛する者を追いつめずにはいられない、自らの性を思い知らされてなお、生きづらさをそのままの形で、いびつな性をそのままの形で、保ち、生きる、硬く、不器用な、生真面目さ。心を抉るような鋭い痛み、目を背けることを許さない、生々しい痛み。だが、新たに生まれた感情の、ほのかな温かさに、躊躇いが示唆する救いに、危うげながらも、自分たちに適した関係を模索し続けるものたちの姿に、愛おしく、ぎこちない安堵の光を見出す。
松浦 理英子
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