最早人のものとも思えぬ姿となりながら、それでも強く、野を生き続けるババと、ババの後を継ぎ、懸命に家を守る、若き嫁ヌイ。一方は野から、一方は人の世から。義理の家族でありながら、まるで本当の親子のように互いの身を案じ合う、ババとヌイ。それぞれの場所から、生と死の不思議を、生と死を繰り返し、魂が巡り行くことの不可思議さを見つめ続ける二人の対話は、老人たちの肉体を襲う惨たらしい崩壊を、彼等が次の生に向かうための、安らかな準備へと変えて行く。
互いを思い合う気持ちが結ぶ、来世の縁。死の哀感を照らす生の光、軽やかとなった身を包むその温かさ。死の哀しみはやがて、新たな生を巡る歓びへ。始まりへと彩られた終わり。終わりを始まりへと彩るいくつもの思い、その豊かさが、その静けさが、慕わしくてたまらない。