戦い同様、互いの思いをはかり合う局面でさえ、言葉は短く素っ気ない。探り合うことにも通じ合うことにも、言葉をそれほど必要としない異質さ故。しかし稀に交わすそれは、少なくとも短くとも、曖昧でわかりにくい繋がりの熱さを、確かに感じさせるもの。なんと言う狡さ。なんと言う瀟洒さ。一瞬にして心を絡め取られてしまう。物語への熱中を妨げるもののない、滑らかな緊迫。気恥ずかしさや違和感に物語への関心を削がれることなく、ただ愉しむのみ。
魅惑的な危うさと緊張感、どうすればその走りを保てるか、どうすれば滑り落ちても行かず、すれすれの所を華麗なまま走り抜くことが出来るかを、すべて見越し、すべてわかっているような言葉の余裕と自信と脂の乗り具合…大変小憎たら、いや、心憎い。最後まで楽しみ抜く。