思い寄せるのはしたたかに、或いは密やかに栄え、やがて巡る命の豊かさ。そして、そこに宿る魅惑的な熱の息吹。心奪う生と死の様相を映す言葉も、自らの揺らめきを象る言葉も、驚くほど真摯で、豊かな響きを持つもの。様々な色に触れ、潜む熱情を見つけ、自らの内に蓄え続ける姿に、その作品の豊艶さを思う。
✳︎
常に潤い、豊かさを保つ心。その目に映るものだけでなく、陰翳の内にあるために、平素見えぬもの、掴み難いものの姿にまで思い巡らせる心は、常にたっぷりと潤い、瑞々しく艶やかに躍動し続けている。いくつもの作品において、人と人の間に生じるもの(情愛、愛憎、情欲…)を捉えていながら、描かれるその様相は、自然が見せる豊かさ、複雑さ、計り知れなさに通ずる、豊潤かつ濃艶なものであって、人の世界の狭く退屈な範疇に滞らぬ辺りが、高樹のぶ子の魅力と感じる部分。湧き出でる魅力の、その根幹とも言うべきものを見る思い。