2015年10月14日水曜日

金井美恵子『目白雑録2』

見逃さないな〜見逃さない。金井美恵子は見逃さない。頓珍漢を見逃さない。愚鈍を見逃さない。嫌いを嫌いって。醜悪を醜悪って。馬鹿を馬鹿って。絶対言う何かしら。見過ごさない。絶対嫌味言う。大変怖い。怯えも結構ある。気後れだって結構する。だのに何故こんなにも居心地がいいのか金井美恵子のエッセイは。
気がつけば入り浸っている。足が向く、心が向くと言うべきかこれは。気がつけばそこにいて、寛いでいる。意外なほど寛いでしまっている自分を発見する。嫌なものがないのだと思う。気後れや怖さは(自分の内に)確かにあるのだけれど、そこには足を遠のかせる類の嫌なものがないのだと思う。色んな煩わしさ(主に性にまとわりつく類のもの)がなくて(ここで何となく森茉莉作品を連想。その居心地のよさにおいて…)、それだけでまず随分居心地のいい場所(その方面で目を瞑ったり押し殺したりしなければならない違和感がないのって、まずそれだけで随分居心地がいいもので…)であるのだなと。
だって寛いでしまっている。甘くないのに、嫌味なのに、優しくないのに、怖いのに、嫌なものはない。何故だか安心してしまう。笑いつつ怯えつつ笑いあぐねつつ寛いでしまう。



目白雑録〈2〉―ひびのあれこれ
金井 美恵子
朝日新聞社
売り上げランキング: 678,654