2015年10月8日木曜日

金井美恵子『目白雑録』

噴き出したり怯えたり萎縮したりまた噴き出したりしつつ、読む。やめられない、とまらない。まったくゆっくり読めない。次はどんな事を言ってくれるのだろう?!と気になって仕方がない。大変怖いし、嫌味だし、ドイヒーだとも思うのだけれども、何故だろう、快さが勝る。好きが勝る。
芯から出るこの物言いの素敵さ。これが平素より出てくる言葉だとか、素敵過ぎる。言い慣れている感が凄い。畳み掛け方が流麗と言うべきか。ひい〜〜とビクつきながらも読んでしまう。「むずむず日記」なんてもう、おしまい付近の数行で二度噴き出してしまう。ひどい、ひどい、けれど痛快…!みたいな。
あてこすりなどと言う可愛いものではない。嫌味につつきまわすと言うが、その一打一打がイチイチ強力過ぎる。ずっと強力な一打が続く。隙間なく辛辣。言いよどむような、仕損じるような半端さとは無縁。呑気さとも日和見とも無縁。こう、なんと言うか、しょっぴいている。醜悪さやら滑稽さやら、次々暴き立て、嘲笑い…何だか捕り物劇のそれに似た快さがあるような。…それより大分毒を持ったものではあるのだけれども。
一つの物事になにか色々くっついていて、でてくるでてくる。一つの引き出しの中にいっぱい入っている感じ。何か一つ取り出そうとすると、それ以外にも沢山(中にはそれと同程度の嵩を持つものだってある)くっついてくる感じ。全然ゆっくり読めない。読んでしまわないと気が済まない。



目白雑録 (ひびのあれこれ)
金井 美恵子
朝日新聞社
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