2015年12月24日木曜日

佐藤亜紀『醜聞の作法』

身遠いもの達の醜聞=最高の娯楽。醜聞の流布=体面を重んじるもの達の企みを阻止する為にはうってつけの手段。それは中々に繊細で難しいもの。過激に情熱的に、だがやり過ぎてしまっては信憑性を失う。訴え掛けるべき多くが望む生々しさを失う。(破廉恥で、退廃的で、危うく、それでいて自身にとっては安全な)刺激に飢えた人々の心を染める為、慎重に、時に大胆に…。巧みにして華麗なやり口。
そして多くの囀りに乗り、驚くほど容易く広まって行くそれ。無責任で軽く、それ故にどこまでも飛び、如何様な形にもなり得る囀り。みなそれを真実として信じると言うよりも、気に入れば、それが真実である事を選ぶ。自身の好奇心や興味を満たすものを真実として、選び取る。気ままであるが故に厄介な取捨選択。それが蔓延り続ける事の、自分自身もまた今その内にある事の、何と滑稽で怖いことか。しかしお話はどこまでも瀟洒。意外な綺麗さ、安定の滑らかさを愉しむ。


醜聞の作法 (講談社文庫)
醜聞の作法 (講談社文庫)
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佐藤 亜紀
講談社 (2013-12-13)
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