男であり女であり、そのどちらでもあるもの。女である事の窮屈さを語る際の、女性としての彼女の言葉には痛快さを感じるけれど、ただそれだけではない。糾弾が帯がちな矮小さや、己が性の優位を誇り、驕る陳腐さの中には当然おさまらない。その苦しみ、その歓喜、遥かに複雑で豊かで聡い。
終わりの、現在を物語る終わりに込み上がる充足感たるや。緩やかに、鮮やかに、濃く、厚く。満ち足りて行く。行き渡って行く。苦しみ、満足し、憤り、安堵し、迷い、相反する思いの多くを含み、驚くほどに潤沢なものとなった喜び。何と豊穣な。何と魅惑的な。
掴み難いものの掴み難さを知る事の、何と苦しい事だろう。知れば知るほどわからなさは増し、何と苦しくて不毛な事か。けれどそれは同時に堪らなく愉しい。苦しみを伴うが故に離れる事が出来ないほどの魅力と化す厄介なもの。そこに挑む為の言葉がまた素敵であること。軽やかで、しかし素晴らしく富んでいる。大変に熱烈。
おさまりきらない。どこにも、なにものにも。どんどん増して行く。この上なく美しく煌めいては、どんどん溢れ出て行く。矮小さ、陳腐さ、退屈さの内より鮮やかに飛翔して。それは凄い事だ。言葉を尽くし、その魅力を物語る事もまた凄い事だ。何と言うべきか、この上なく素敵なおすそ分けをいただいてしまったと言う感じがする。
ヴァージニア ウルフ
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