2016年1月9日土曜日

イタロ・カルヴィーノ『レ・コスミコミケ』

気が遠くなるほどに膨大な時間を物語る大法螺。それも平然と流暢に。大変イカしている。果てのないはじまり、幾つもの変化、幾つもの進化、幾つもの喪失。壮大かつ広大な大法螺。しかしそのまとまり具合は妙にこじんまりとしているような。物語る事どもは確かに膨大なものであるはずなのに、それ自体は何だか掴みやすい大きさである大法螺。
そして妙にみっちりとしている。荒唐無稽と言うほど浮ついたものではない。奔放さ、縦横無尽な豊かさ。それ等は確かに奔放である事の、縦横無尽であるが故の軽やかな楽しさを備え、此方にその恩恵を齎しはするが、受ける印象はやはりどこか、確かさや手堅さを含むものであるような気がする。
存外にしっかりとした大法螺。存外に律儀で親しみ深い矮小さを持つ、それでいて壮大な大法螺。それが何だかいい。心憎いと言うか。違和感や掴み難さに躓いたり立ち止まったりする事なく大法螺を愉しむ(大法螺に乗る、説き伏せられる?)事が出来る為に。


レ・コスミコミケ (ハヤカワepi文庫)
イタロ・カルヴィーノ
早川書房
売り上げランキング: 166,694