共鳴は慰めへと。決して埋まる事のない隔たりは憧れへと。惹かれ、魅入り続けたユルスナールの言葉。旅路は自身とその言葉との間隙を埋める為に、僅かでもその言葉に近付く為に、必要なものであったのではないかと思う。遠く近い、その距離を確かめる為に。
明かし難い衝動の強さに戸惑い、思うままに進む事の出来ぬ不自由さに悩み。苦しみは暗がりに重く、わだかまり続けていた。しかし、慕わしい軌跡を辿る、長く繊細な試みの中で、陰翳に滞る歯痒い記憶の多くもまた、報われたのではないか。彼等が緩やかに解けて行く喜ばしさ。旅路の果てに見た、安堵の柔らかさを思う。憧憬の温かさを思う。