2016年2月27日土曜日

松田瓊子『七つの蕾』

美しい、美しい、しかし、儚く弱々しく煌めき香る類の美しさではない。脆く、可憐に咲く子ども達の美しさではない。もっと活き活きとしていて、伸びやかで、明るくて、賑やかで、時に騒がしい美しさ。健やかな平穏、哀しみに濡れて光る不幸は、優美な幸福へと。甘く柔らかな憧憬はしかし、さえずりの朗らかさにこそ、誘われる。
物語を大切にする、物語の中にある、また物語を思う時にある、豊かさや喜びを大切にする子ども達の物語。それぞれの特別、それぞれのとっておきを持ち寄っては見せ合い、重ね合い、物語をより新しく、より魅力的に膨らませて行く楽しさ。行き渡る愛情は、時に押し付けがましく、煩わしいものとして降り注ぐそれとは別の、彼等と同じ場所で、同じ楽しさや哀しみを見つめるが故に、溢れ出るもの。微笑ましく、快い。

最後の、小雑誌『つぼみ』などとてもよかった。読む、思う、書くことの楽しさを知る子ども達の、微笑ましく、けれど懸命な試み。同じく松田瓊子の『すみれノオト』が欲しくなる。



七つの蕾
七つの蕾
posted with amazlet at 16.02.27
松田 瓊子 中原 淳一
国書刊行会
売り上げランキング: 420,389