その性に抱かれがちな幻想を剥がすたくましさ。決して綺麗ではない、美しくもない、生臭くて、ごつごつとしていて、大変で、不可思議で。しかし、そのままを肯定しているように思える。何一つ纏わぬそのままを。見苦しさも含め。賛美するのではなく、淡々と肯定。
地獄にだって、救いにも慰めにも繋がる事のない、素朴な喜びや笑いがある。わかりやすく沈んでいるばかりではない。地獄でだって、心は雑多であるもの。いくつもの機微がある。とても村田喜代子作品らしいと思う。偽りや欺瞞の数々に送る皮肉の斬れ味もまた。そして、何よりも狭く戦わない所がいい。広々と思いを馳せ、女性達は悠然とすべてを踏み越えて行く。何とも喜ばしい力強さ。
村田 喜代子
新潮社 (2016-01-28)
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