2016年5月11日水曜日

佐藤亜紀『雲雀』

良すぎて腹立たしい。悔しい。もう痺れる。迸る。まず再会を実感させる掛け合いの鋭利さに。次に件の心残りがあまりにも素敵過ぎて目眩。『天使』の時の高揚。一瞬にして蘇り、この世界に再び戻って来た喜びが心を駆け巡る。あの絶妙な滑らかさを。あの絶妙な脂の乗り具合を。疾走のあの華麗さを。一瞬で思い出す。
彼等を象る言葉は多くない。彼等が発する言葉、交わす言葉もまたそう。しかし自分は彼等を、よく知っていると感じる。こういう人間であると、よくわかっている。それ以上にもそれ以下にもなり得ないが、するべき仕事はキッチリと、見事にこなして見せる彼等の事を。何と言う心憎さ。そして魅せられ続けている。そのどうしようもなさに。その狡猾さに。その大胆さに。表には見えない、けれど確かにある繋がりの、その瀟洒さに。腹立たしい、けれど好きになるほかない。ずっとヤラレっぱなし。


雲雀 (文春文庫)
雲雀 (文春文庫)
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佐藤 亜紀
文藝春秋
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