なんと言うべきか、夜に属する物語達と言った印象。その調べは甘やかな微睡みの一幕にこそ相応しい。重厚な闇に映える、淡く優美な月明かりの下にこそ。眠りへと蕩け行く緩やかな瞬間にこそ。幾つものイメージ、妖しく、儚げに、けれど鮮やかに息づく幾つもの幻想を物語る調べは。うとうととほどけかけた身に、深く、奥深くまで沁み入り、夢をさえ染めてしまう。その心が望む通りの色に。おぞましくも。喜ばしくも。洗練と精製の過程に得た美しさと、雑多であり、素朴であるままの言葉で語り継がれて行くお伽話の根強さを兼ね備えるが故に。それは夢を形作る力を持つもの。
シャルル ノディエ
岩波書店
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