苦痛の凄まじさ。厄介さ。難病である所以。けれどそれでも、その時間に満ちる意外なほどの穏やかさのほうに、自分は目を向けてしまう。抗う為、滅する為の自己強化も、信仰も、必要とはしていなかったせいか。一つ一つ確かめ、折り合いをつけて行く。生き辛さは創作の源…生き辛さのその正体と言うべき病と対峙する時間が、今までにない喜びや快さを知る事さえある、穏やかなものであった事に、自分は安堵してしまう。
白く、清浄な部屋。静かで、ガランとしていて、それ故に平穏で、無菌状態の。今回も
またそんなイメージが浮かぶ。それは今までの笙野頼子作品で見た、闘争の果ての世界、その静謐の光景に対し、抱いていたイメージ。それを思う時。自分は落ち着く。緩やかに癒やされ、静まって行く。
その正体を知った所で。何も変わりはしなかったが。かつての作品群が変貌を遂げた様子もなく。此方の思いがしぼんで行くと言う訳でもなく。これまで通り、自分は読むと思う。その生き辛さを読み、上手くいかなさを読み、憤りを読み、これまで通り、時には自分を見つけたりするに違いないと思う。
笙野 頼子
講談社
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