2016年9月20日火曜日

「群像短篇名作選」の記録

河野多惠子「骨の肉」を読む喜び。享楽の残骸。焼失の果て、不気味に積もる骸の凄艶な事。最高かと思う。津島佑子「ジャッカ・ドフニ 夏の家」に見た邂逅の予兆。村田喜代子「鯉浄土」の凄さ。生そのものの凄さを知るような。凄まじい様相。納得する。手術を終えた夫への、置いて行かれた、と言う思いを。「火の魚」で思い出す犀星の怖さ。女人に向ける、暗い熱を孕み、執拗で、思い詰めたように切実な視線の。老成し、狡猾さを増した視線の。富岡多恵子のあの、幻想を剥がし、ただそれだけの事であるに過ぎないと物事を語る言葉の乾いた感じ。取り付く島もないし、身も蓋もないのだけれども、どこか艶っぽい感じ。大庭みな子の強さ。清濁併せ呑むが故に出でる敵わなさのようなもの。小沼丹「懐中時計」が残す不思議な余韻。これが滋味かと思うように不思議な。諸々堪能する。



群像 2016年 10 月号 [雑誌]
群像 2016年 10 月号 [雑誌]
posted with amazlet at 16.09.20

講談社 (2016-09-07)