2016年9月27日火曜日

今村夏子『こちらあみ子』

どうすればいいのか、と思う。どうするのか、と思う。あみ子と対峙する時。自分は。何も通用しないのではないか、とか。色々考えて何も出来ないのではないか、何もしないのではないか、と思う。隔りに戸惑い、計り兼ね、散々悩み、結局諦めて見なかった事にするのではないか、と。
あみ子はいつも、して欲しくない事をする。あみ子のしたい事、する事はいつも、自分のして欲しくない事であった。してはいけない事をする、とは違う。爽快さなんてなかった。その都度ひりついた。応じる事が出来ないので尚更。けれど彼女は此方の逡巡になど目もくれずに飛び越えて行く。どこまでも自由に。怒りだとかわだかまりだとかですぐいっぱいいっぱいになってしまう此方を無力にするほど不都合に。



こちらあみ子 (ちくま文庫)
今村 夏子
筑摩書房
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