2016年9月9日金曜日

金井美恵子『道化師の恋』

何だか凄く気恥ずかしい。(自分にとっても)うんざりするほど知っているような事であったり、身に覚えがあるような事であったり、馴染みすぎて最早なにも感じなくなっていたような事であったり、あまりにも身遠いような事であったり、出来るつもりになっていたような事であったり、知ったかぶりをしていたような事であったり、適当な所で納得していたような事であったりして、本当にもう、見ていて凄く気恥ずかしい。
なんてひどい人だ、と思う。自分が今いる場所のありがちさがわかると言うか。自分の鈍重さがよくわかると言うか。セコさと言うかみみっちさと言うか厚かましさ(あー気恥ずかしい、と言いつつそれで何かを変えようとする訳でもない辺りであるとか。あー嫌になる、あーバカみたい、と言いつつ本当は自分自身の事も、今いる場所の事も、満更悪くないと考えている辺りであるとか)と言うか。なんて的確で精巧で辛辣で魅力的な当て擦りなんだ、と思う。大好きだ、と思う。



道化師の恋 (河出文庫文芸コレクション)
金井 美恵子
河出書房新社
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