2016年11月28日月曜日

武田花『仏壇におはぎ』

皆(ものも生き物も)、人が来た時だけしぶしぶ、のそのそと動き出すのではないか。ついついそんな事を考えてしまうほどに長閑な静止の風景。まったく特別なものではない長閑さ…皆ただ自分であるだけ、と言うか。それが定位置と言った風。定位置にあるものを訪ねると言った風。そこに溶け込むと言った風のおさまり方。
人を楽しませるためにあるのではない(当たり前過ぎるが)もの達と、善し悪しで彼等を語るつもりのない言葉。不恰好であったり、不揃いであったり。でこぼこしていたりするそのままをおさめる。言葉にする。そこに溶け込む自分も含め。自分も溶け込む子供時分の印象深い光景を切り取る際。子供の私、と武田花は言う。その語り方が何だかとても好きだ。

中途半端な紛い物である事を許さぬようなごつごつとした言葉にいきなり遭遇してもう夢中。うおっ、となった。好きになるとは思っていたが、本当に好きになってしまった。すぐ好きになってしまった。



仏壇におはぎ
仏壇におはぎ
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武田 花
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