2016年12月2日金曜日

ジョイス・マンスール『充ち足りた死者たち』

激しく、粘っこく、醜悪であり官能的であるイメージの累積。次々使う。次々使い捨てる。次々使い、使い捨て、超えて行く。使い捨て、突き破る。使い捨て、破壊する。その躊躇いのなさ。驚くほど徹底的であり、凄まじい。贅沢に、潤沢に、使い捨て、飛んで行く。
愚かであり滑稽であり淫靡である様相。見たくないもの、認めたくないものの多さ。嫌になる。馬鹿げているとさえ思う。満たすため使い尽くしたその残骸の山。絶えず流し込まれ、胸が焼ける。飲み込み難く、消化し難い熱が滞る。苦しみ、喜ぶ、剥き身の蠢きに触れる嫌悪と痛快さ。圧倒され、声を失う。吐き出す事も出来ない。

付録が金井美恵子と矢川澄子による書評で大いに喜ぶ。お宝だ。お宝が増えた。
矢川澄子はジョイス・マンスールが羨ましいと言う。妬ましいと言う。それがとても悲しい。矢川澄子の枷は堅牢であり過ぎる。頑なであり過ぎる。自分自身と言う枷。そして抗うには繊細であり過ぎたのではないか。



充ち足りた死者たち
充ち足りた死者たち
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ジョイス・マンスール
白水社
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