2016年12月18日日曜日

皆川博子『笑い姫』

物凄く可愛い夫婦を見た。物凄くミーハーな読み方をしてしまった。皆川博子作品の中で一番可愛いかも…。読んでいる最中、自分はこの可愛い夫婦の追っかけであった気がする。復讐、或いは自身の信ずる大義の為、その身を利用しようと目論む身勝手で傲慢な誘いのすべてを跳ね除け、大切な者の為にのみ奮い立つ心のまま、自分の生を選択し続けた結果、当然のように共に在る二人。誰かの道具となる事も、また自分が誰かを踏み躙る側に回る事も。拒み続け。自然と寄り添い合う…好ましいの極み。
蘭之助の平静さがよい。それは野心や情熱を持たぬが故に保ち得る平静さではあるのだが。けれど自分が何によって動き、何を大切とするか、しっかりと見極め。惑う事がない。容易く貫き通す。抜群の安定感。ずっと信じていた。何一つ裏切りはしなかった。



笑い姫 (文春文庫)
笑い姫 (文春文庫)
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皆川 博子
文藝春秋
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