2016年12月23日金曜日

武田花『犬の足あと猫のひげ』

写真も、文章も、やはりその中にいるのは皆、ただ自分であるだけのもの達、と言った風。犬も、猫も、人も、物も。皆、ただ自分であるだけ。皆、誰かに見られるためにあるのではない自分であるだけ、と言った風。
平素どんな生活をしているのか。ぼんやりとでも想像する事が出来ず、ただすれ違うだけであった人達の、普段を知る思い。何故そこにあるのか。気にはなっていたけれど、ただ通り過ぎるだけであったもの達の、すぐそばに来た思い。
その普段、そばで見たその姿、その生き死にの様子はあまりにも当然のもので、自分はそれを、わかっていたような気もする。感嘆を必要としない時間はあまりにも穏やかで。今後しばしば戻りたくなるに違いない。



犬の足あと猫のひげ (中公文庫)
武田 花
中央公論新社
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