以下その内の二編の記録。
「夜の姉妹団」
未知の事柄に対する仕打ちの、理不尽さにげんなり。すぐに名付けようとする。決め付けようとする。自分達の知っている事柄の中に、収めようとする。片付けようとする。無理解に、無神経に、安易に。口をこじ開けようとする。自分達にはわかり得ぬ沈黙に対し。乱暴に干渉しようとする。
姉妹団は理解して欲しくなどないのだ。見られたくもないし、話したくもないのだ。
「新自動人形劇場」
かつて飽きる事なく求め続け、夢中になっていた快楽が、その台頭によって、色を失い、最早高揚と不安を鎮める安堵の対象と化す程に、不穏で、危うい、新たな快楽の出現。それは無様である事で、見苦しい事で、先の快楽を残酷に否定する類のもの。至高であると、熱心に信奉し続けた快楽への、憧憬を揺るがすもの。よく見知ったものの、未知の領域を目の当たりにすると言う居心地の悪さにも似た。そこでは自身の持つ何もかもが通用しない事を思い知る怖さにも似た。不安で、腹立たしく、けれど一度知ってしまってはもう、二度と元には戻れぬ類のもの。
その他…「協会の夢」や「パラダイス・パーク」も大変よかった。行ける所まで行くと言うか、どこまでも行こうとする。探る方もまた戸惑いつつ慎重に疑いつつ、けれど迷い込む。未知へと誘われ、不安と時に憤りを覚えつつ、けれど夢中になる。病みつきになる。最早再び潜り込む為に、地上へと戻って行く有様。