漠然とした関心。普通ではないと言う事に対する。逸脱した事をするものに対する。逸脱した事をするものへの処遇に対する。どうしても到達出来ないと言う感覚。言葉に。漠然としたその心地に。物それ自体はここに確かにあるのだけれど。馴染む事が出来ないと言う感覚。あてはめる事が出来ないと言う感覚。掴みあぐねたまま危うげに彷徨う。
何と鋭敏な。何と七面倒な。何とスレスレな。多和田葉子を読むたび世界が広がって行く…と言うより、この世界が注視すべきものばかりである事を知る。と言うより、注視すべきものばかりでキリがない事を思い知る。物語から出てまた物語へ。