本人が言う所の〈性器結合中心的性愛観を突き崩そうという情熱〉がやはり何よりの魅力。それは官能、快楽と言った方面への鋭敏さや貪欲さより生まれたものであるように思う。官能に対し、快楽に対し、鋭敏であり、貪欲であるが故に、松浦理英子は超えて行く。性器結合と言う形を。より強く、より深遠な快楽の在り処を求め。性器結合では辿り着けぬ領域を目指し、松浦理英子は超えて行く。官能に対し、快楽に対し、探求者の如く真摯であるが故に。逃げる事なく、避ける事なく、模索し続ける。時に冷や冷やとしてしまう程、どこまでも生真面目に。何と清々しく高潔な。
しかし若い。全然逃げないし、避けないし、やり過ごさない。とりあえず挑む。挑み続ける。全然こなれていないと言うか、巧くはないように思う。けれど凄くいい。その頑なさ。その緊張感。官能に対し、快楽に対し、兎に角生真面目で在り続ける。よりよいやり方を、在り方を、兎に角生真面目に模索し続ける。その偏執狂の如き情熱。凄く好きだ。性器結合中心的性愛観からの脱却を目指す最たる理由が、性器結合的な官能や快楽を超えた、より濃く、より豊かな官能や快楽に辿り着く為と言う、諸々超越したものである痛快さと共に、逃げず譲らぬ松浦理英子をこそ自分は何よりも愛する。
松浦 理英子
筑摩書房
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