2017年8月14日月曜日

栗田有起『蟋蟀』

よかった。自分の好きな栗田有起ばかり。「豆姉妹」や『マルコの夢』を読んでいた時の心地よさがここに。
みんな一所懸命自分を生きていて、愛おしかった。何か少し、人と違う、変わった所(しかも何か少し、何か一つだけ、である為に目立たない、わかりにくい、気付かれにくい、自分さえ我慢すれば隠し通せてしまう類の、かえって厄介であるそれ)のある自分を。苦しくても悲しくても、生き辛くても嫌になっても、やめる事も、別の何かになる事も出来ず、結局は生きて行くほかのない自分を。素朴に、みんな驚くほど素朴に。一所懸命。
諦める事なく、ヤケになる事なく。どちらかと言えば前向きに、けれどそれも無理に気張った結果のぎこちない前向きなどではなく、もっと自然な、力の抜けた、ゆるっとした前向き。自分に馴染む、と言った感じの。人とは違う、自分の普通に。自分であるが故に起こる、いい事も、悪い事も含め。自分自身に馴染んで行くと言った感じの。緩やかで、ほどよい前向き具合で。愛おしいし、何より居心地がよくて、いつまでも見ていたくなってしまう。



蟋蟀 (小学館文庫)
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