2017年10月16日月曜日

村田喜代子『八幡炎炎記』

何て雑多なのだろうか、と思う。何て幅広いのだろうか、と思う。何て不可思議で、複雑で、おさまり切らなくて、悲しくて、激しくて、野太くて、厚かましくて、頑丈で、逞しくて、ごみごみとしていて、暑苦しくて、見辛くて、汚くて、騒がしくて、淫らで、身勝手で、ややこしくて、手に負えなくて、敵わなくて、厄介なのだろうか、と思う。全然、一つも綺麗にはいかない。でこぼこ、ごつごつとしている。難しくて、もどかしい。やるせない。紙一重で、何があるかわからない。掴み難く、予測し難い。生というもの。生の雑多さとでも言うべきごちゃつき具合。ぐつぐつと煮えたぎっている。悶々とわだかまっている。飲み込もうしても、今はまだつっかえてしまう。
それは煮詰まれば滋養となり得る様相。兎に角熱くて、ごろごろと入っていて、どろどろに濁っていて、強烈な臭いを放ち、けれど煮詰まれば、滋養となり得るもの。今はまだ溶け切っていないため。今はまだ混ざり切っていないため。煮詰まるまで待つ。どのようになるのか。どうにもならないのか。わかるまで待つ。もっと凄まじい様相になるまで、煮詰まるまで待つ。



八幡炎炎記
八幡炎炎記
posted with amazlet at 17.10.16
村田 喜代子
平凡社
売り上げランキング: 577,443