2017年10月30日月曜日

宇野亞喜良『定本 薔薇の記憶』

何とも贅沢な一冊であった。贅沢に詰まっていた。その時間ごと、詰まっていた。美しいもの、綺麗なもの、官能的なもの、退廃的なもの、淫靡なもの、刺激的なもの、感動的なもの、奇妙なもの、楽しいもの、面白いもの、愛するもの、好ましいもの、不可思議なもの…豪華ではあるけれど、思いの外雑然と、親しみ易い形で詰まっていた。
その時間分、詰まっていて、雑多であり、宝箱のよう。葛籠のよう。行李のよう。ジュエリーボックスのよう。バニティケースのよう。夢を含み。幻想を含み。毒を含み。熱を含み。夜を含み。変化を含み。日常を含み。期待を含み。充足を含み。持ち主が離れても。自ら息吹き。密かに薫り続ける。密かに煌めき続ける。

自分にとって特別な宇野亞喜良は、皆川博子の『絵小説』、特に「あれ」の、深く、妖しく、恐ろしく、密やかな暗闇に浮かび上がる、あの絵…。皆川博子の言葉と、溶け合っている。「あれ」を思い出す時、イメージは言葉でもなく、絵でもなく、言葉と絵が溶け合い、一つの魅惑と化したもの。



定本 薔薇の記憶 (立東舎文庫)
宇野 亜喜良
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