読書と感想と記録
個人的な読書の感想と記録。金井美恵子のファン。
2017年11月14日火曜日
レオ・ペルッツ『アンチクリストの誕生』
行き交う。交錯する。乱反射する。奔放に飛ぶ。変な風に進む。人の思惑が。人の生が。皮肉的であり、複雑であり、不可解であり、野太くて、酷く呆気ない、人の生き死にが。その鮮やかに行き交う様を、鮮やかに交錯する様を目の当たりにする。終わりまで見届ける。興奮、何と言う面白さ。どこまでも用意されている嬉しさ。
夢中で読む。時間も、場所も、吹き飛んでしまう。物語が現実に取って代わる。現実を生きるように物語に集中する。緊張し、笑い、もどかしく思い、悲しみ、ハラハラとする、ため息をつく。流れに乗り、目の前にある緊迫感を、可笑しさを、悲哀を、兎に角貪って進む。享楽的疾駆。
オチがまたいい。蒸され、燻され、煎られ、どれも一筋縄ではいかない。苦味を残し、渋味を残し、けれど滋味深く、満足感をもたらす。
アンチクリストの誕生 (ちくま文庫)
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