2017年11月9日木曜日

津島佑子『夜のティー・パーティ』

"普通"を外れた場所から"普通"を見る、と言った風。何気ない話題であっても、立ち位置は変わる事がない。"普通"の外にも当然、生があり、幸せが存在する事を証明し続ける。喜びも楽しさも大変さもある日々の、その何気なさを以って。特別な事のなさを以って。"普通"とは異なる形であっても、欠けているように見えても、それが自分達の最良である事を証明する。時に逡巡し、迷いを見せ、不安げに。けれど強い言葉で。
他者を平然と否定するものの多さや、そう言った人々の声の大きさに流されてしまう事なく。自分自身に対して真摯であり続ける事を諦めてしまう事なく。苦しみにも、生き辛さにも、惨めさにも負けず、目を背けず、懸命に自身の生を選択し続けた結果の今であるが故に。未だ迷いつつも強く。確かめるように、証明する。

何気ない話題の、その何気なさこそが、何気ない楽しさや喜びを語る、その言葉こそが、最も力を持つように思う。表題作など特に。何よりの証明となる。彼女の選び取ったそれが、欠けていない事の。それもまた最良の形であるのだと言う事の。何よりの証拠となる気がした。


夜のティー・パーティ (1979年)
津島 佑子
人文書院
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