2017年12月3日日曜日

金井美恵子『猫の一年』

〈そして、眠っている猫をおこすとどういうことになるか? 答 また、眠りなおす。〉…
〈トラーの秘密〉、〈トラーの秘密、そして、老いのしるし〉、〈トラーの禁じられた狩りの秘密〉…
〈私たちは職業柄ひどく古風に、トラーを絵と文章と記憶の中で、飼いつづけている〉…〈バラ色のベロ〉、〈ついでに頭と背中を一撫して〉、〈つまらないねトラーがいないと〉、〈柔らかな肉球付きのあしのうら〉、〈暖かい毛深い体〉、〈持ち前の強くしなやかな筋肉と優れた運動神経〉、〈シッポが中途半端な長さで先がカギ状に曲っていたことは、欠点には入らない〉、〈それに、もちろん、もちろん、あの、変化に富んでいろいろな鳴き方の出来た頭のいいトラーの鳴き声〉…トラーちゃんがいっぱい。
ふくふくとした幸せ。本当にあちこちにいて、座ったり、寝転んだり、ぬっと見ていたりしていて、とても可愛い。『ページをめくる指』で読んだ、〈猫をなでたり触れたりする時の、あのあたたかなのに、どこか冷やかな〈別の生物〉の充実していてなおかつ軽い存在感を見る者に感知させる〉と言う文章を思い出す。トラーちゃんのいる金井美恵子のエッセイこそが、自分にとってはまさしくそれなのだ。

そしてまた沢山ふきだす。人(今回は主にヒデさん、ヒデさん周り)の滑稽さやズレっぷりを明らかにする、知らしめる事のうまさ、見逃さなさ。そもそも彼等(↑)を笑うのがメインのエッセイなのであるし。



猫の一年
猫の一年
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金井 美恵子
文藝春秋
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