読書と感想と記録
個人的な読書の感想と記録。金井美恵子のファン。
2017年12月10日日曜日
村田喜代子『雲南の妻』
楽園であり、理想であり。桃源郷。穏やかで、自由で、鮮やかで、軽やかで、多彩で、豊潤で、活発で、剥き出しで。普通などなくて、何も飾る必要がなくて、幻想や建前を用いて隠す必要もなくて、生きたいように、生きやすいように生きて行ける。風のように軽い結婚。
何て楽しい。何て清々しい。女と女が築き上げた、堅固な城。花のように、美しく、豊艶に。強く、逞しく、動き、働き、遊び、歌い、思うままに生きていた、あの時間。妖しく、けれど清澄な、あの交歓。健やかで、明朗で、切実な、あの結び付き。それは考える度。胸を温かに満たすもの。不可思議で、奇妙で、密やかで、信じ難くて、とても幸せで。狭く、不自由な生の、救いとなり得るもの。それを思い出すだけで。たまらなく癒される、夢のような。決して忘れ得ぬ、永遠の、愛と言うべきもの。
雲南の妻
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