とても気持ちが悪い。あの強引さ、理不尽さ、無神経さ、厚かましさ、慌ただしさ、粗さ、粗暴さ、猥雑さ、うるささ、煩わしさ、陰湿さ、厭らしさ、鈍重さ…。急拵えで、いびつで、ちぐはぐで、がたがたで、けれどしぶとくて、中々壊れてくれない。醜く見苦しく持ち堪え、そう綺麗に崩れてはくれない。ごみごみと、逃げ場もなく、身動きも取れず、未だ平然と侵入され続けていて、もういっぱいいっぱいで、いっその事崩れてしまった方が清々しいのに。それでも都合よく消え去ってはくれないから、やめてしまう事も、終わりにしてしまう事も出来ないから、とても恐ろしい、とても気持ち悪い。
自分もまた決して知らない訳ではない気持ち悪さ。残念な事にそれは、無縁のものでも、身遠いものでもなく。自分にとっても決して無関係のものではない気持ち悪さ。知っているものとして、身に覚えのあるものとして、当然の如く沈殿して行く。
吉田 知子
読売新聞社
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