2018年2月8日木曜日

石井桃子『プーと私』

石井桃子はすごい。石井桃子がいてよかったなあ、と思う。短くて長い、楽しくて嬉しい、わかりやすいのだけれども余地があって、広く、奥深く、忘れ難い、沢山のしあわせな時間をくれた人であり、今もなお、与え続けてくれている人。その偉大さ。その聡明さ。その実行力。その熱心さ。その目のよさ。その言葉の豊かさ、丁寧さ、確かさ、親しみ易さ。本当に慕わしい。
石井桃子がいたからこそ、と言うような事が多過ぎる。石井桃子がした事。ちゃんと伝わるよう、わかるよう、納得がいくよう、言葉にし、形にし、残してくれたもの。それはいつだって、触ればきちんと応えてくれて。読み始めれば何度でも、動き出し、しゃべり出し、開くたび、めくるたび、思い出すたび、楽しく、嬉しくなるもの。(この、ちゃんとわかる、納得がいく、きちんと応えてくれる、と言う、素朴なのだけれども重要で、大変に大切である事が叶う有難さ…。)
お友だちであるプーの事。ビクトリアス・ポターの事。ドリトル先生の事。ドリトル先生を訳していた際の、井伏鱒二の事。偉大なる先達の事。自身が見た欧米の図書館の事。児童文学の事。まことにいい本であるなあと思う。忙しいと知っていつつも何度も訪ねて行ってしまいたくなる、通ってしまいたくなる、お手紙を沢山出してしまいたくなる、おうちのような。
石井桃子がプーを訳すきっかけとなった犬養邸でのエピソード、犬養道子が石井桃子に読み聞かせをして貰うと言う、読み手が石井桃子で聞き手が犬養道子であると言う豪華さ…!読み手も聞き手もまばゆい。みんな夢中で、きゃあきゃあ叫んで、ひっくり返って転がって、読み終えた後は語り合って。その喜びよう。〈それは、ほんとうに、肉体的に感じられたもので、体温とおなじか、それよりちょっとあたたかいもやをかきわけるような、やわらかいとばりをおしひらくような気もちであった。〉その感覚の不可思議さ。こちらも何か、途方もなく貴重な瞬間を読んでいると言う気持ちになる。 …実際に途方もなく貴重な瞬間であるのだけれども。



プーと私
プーと私
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石井 桃子
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