2018年4月4日水曜日

石井桃子『みがけば光る』

‪まことに豪華な交流の数々。一つ一つが途方もなく貴重なものであるように思えてならないエピソードの数々。けれど納得する。集まる所に集まるのだと。然るべきそれら。高次の相応であるそれら。そのすべてが意味を持ち、価値を持ち。道となって行き、先へと繋がって行き。そのどれもが必要。どこを見ても大切なものしかない。ちゃんと聞きたいお話しかない。聞き所しかない。特に井伏鱒二の「太宰君、あなたがすきでしたね。」からはじまる一連のやりとりを、自分は一生忘れないと思う。簡単に片付けてしまいたくない。簡単に断じてしまいたくない。石井桃子の言葉をそのまま、その掴みがたさ、複雑さごと覚え続けていたい。
好機を、自らの才を、感性を活かす姿。仕組みを作り、場所を作り、自ら取り組み、切り開いて行く姿。煌めいている。輝いている。今なお鮮やかに。その真摯さ。その丁寧さ。故に石井桃子の文章は簡潔で、的確で、聞き取りやすくて、わかりやすくて。触れればふうわりと広がって、残り続ける。しなやかで、丈夫で、手強くて。根を張り、静かに育ち。長く長く支柱となり続ける。豊かで、柔らかに膨らんでいて、たっぷりと、多くのものを含んでいて。養いとなる。繁茂の源となる。奥深くにまで行き渡り、潤沢に満たす。



みがけば光る (河出文庫)
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石井 桃子
河出書房新社
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