2018年4月14日土曜日

鴨居羊子『わたしのものよ』

父、母、兄、弟、近所の人、友だち、先生、親戚。犬の与八だの弥吉だのチビだの烏のカァー吉だの。動物も人もたくさんいてまことに楽しい。みなおのおの違った鮮やかさがあって、違った奔放さがあって、鴨居羊子がそれをよく見ていて楽しい。特に自分との違いをよく見ていて、それぞれに反発したり贔屓したり(何と言うその屈託のなさ!)しているのも楽しい。人も動物も愛していて楽しい。与八にしがみついてしゃべってやったとか、ときに犬は私の乳母のようだとか、まことに楽しい。あの弟、もいっぺん生き返って、小っちゃくなれ!だとか、今度生まれ変わったらみないっしょに住もうよ、だとか。まことにたまらない。それら全部、鴨居羊子のもの。鴨居羊子だけのもの。その全部、持っている言葉も記憶も親しみやすくて可笑しくて、魅力でいっぱい、好ましさでいっぱい。
言われた通りには出来ないし、しない。お膳立てされた通りにも出来ないし、しない。まとまってしまわず、おさまってしまう事なく、好きにやる。辛くても、大変でも、絶対に折れてしまう事なく、好きに作って、好きに描く。そうやって鴨居羊子が好きにやる事の楽しさと言ったらない。鴨居羊子が自由に書き始める事の素敵さと言ったらない。好きにやって、それが上手く行くのだから鴨居羊子は凄い。成し遂げてしまうのだから凄い。痛快であったり、魅惑的なものを作り上げてしまうのだから鴨居羊子は凄いのだ。かっこよさしかない。惹きつけられてやまない。



女は下着でつくられる (鴨居羊子コレクション)
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国書刊行会
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