蠱惑的である事。その卑怯さ。その無様さ。その憎しみ。その歪み。その空白。その混濁。その疑わしさ。その危うさ。その虚ろさ。その戸惑い。その悲しみ。その暗さ。その不穏さ。その自嘲。その怯え。その否定。その衝動。その決意。その覚醒。その絶望。その強さ。その手堅さ。錯綜するそのすべてが蠱惑的である事。革命の、動乱の、渦中にて生まれ、宿り、育ち行き、くすぶり、滞り、発露し、迸る、そのすべてが。素晴らしく濃い。ほかのなにもかもが色褪せて見えるかのような。
ジャン=マリの安定感たるや…。皆川博子の世界のこの手の人物。安心する。拠り所として読み進める。