2018年7月20日金曜日

金井美恵子『新・目白雑録』

〈その時々の時代の大文字のニュースや出来事の周辺で書かれた様々の小さな言説に対する苛立ちを書いていると、きりというものがないのは確かである。〉
〈そして、書き残しがあってこそ、書き手はまた書きはじめることが出来るのです。〉

いつまででも読んでいられる。ゲラゲラ笑ったり、とても納得して、確かにそうだとうんうん頷いたり、兎に角うきうきと、楽しみながら読む。堪らない掘り進め方、連なり具合。一つ取り出せば、次々出て来る。金井美恵子は一つの事柄からいくつもの物事や情景や感覚を、滑らかに思い出し、隙間なく連想する。このまま続いて欲しいと思う。金井美恵子の鋭敏さによってのみ、繊細によってのみ、自分は満たされる。ずっと書き足りないでいて欲しいと思う。とめどなく、これからもずっと読みたい。きりがなくて私は嬉しい。このまま色々、いつまででも気になり続けて欲しい。
退屈で、陳腐で、鈍くて、くだらなくて、おかしくて、ズレていて、ピントが合っていなくて、イラつく事も、うんざりするような事も、山のようにあるのだけれども、自分がこうして金井美恵子を読み続ける事が出来るのは、そういった事共が山ほどあるお陰でもあるかもしれないので、まあ仕方ないかと思う。辛くても金井美恵子を読みたいので生きて行く。



新・目白雑録
新・目白雑録
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金井 美恵子
平凡社
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