2018年12月15日土曜日

皆川博子『夜のリフレーン』

集めて並べて、そっとしまっておきたい。蒐集欲を煽り、高めるその美しさ。小さなその一つ一つが、読む者を引き摺り込み、とらえる、沼のように、深々と濃く、妖しく、残酷な魅力を湛えている。薄闇の中、静かに、密やかに、蠱惑的に、潜み、佇み続けている。
小さく、短いけれど、精巧で、深遠。しっかりと、恐ろしい。しっかりと、美しい。しっかりと、澱んでいる。しっかりと、満ちている。手のひらにおさまるほどに細かなものであるのだけれども。触れればどこまでも沈んで行ける。危うげで、不穏で、退廃的なモチーフの数々、小さなその一つ一つが、後ろ暗く、甘美な愉悦をもたらす。
密やかな喜色。落ちて行く際の。朽ちて行く際の。果てて行く際の。思わず見惚れる。恐れを抱きながらも、嫌悪しながらも、躊躇いながらも、溺れる。繰り返し溺れる。皆川博子の短篇と言う、掌編と言う、幾つもの悪夢を、幾つもの魅惑を、黒々とした欲望と至福を、コレクションする喜び。取り出しては眺めてその深みへと沈み、また隠すようにしまい、愛し続ける。

妖しく連なるそれら。悪夢のよう。甘美で、蠱惑的な。沼のように、深く、抜け出せぬ。身を委ねれば、どこまでも、どこまでも、沈んで行けるような。醒める事なく、続いている。悪夢のよう。奥底にしまい、幾度となく取り出しては、密やかに楽しむ。


夜のリフレーン
夜のリフレーン
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皆川 博子
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