何かから、自らがよくないと感じる何かから脱却しようと試みている人が用いる言葉であるように感じる。何かを、形の定まらぬ何かを掴もうと模索し続けている人が用いる言葉と言うか。降りて行く人の用いる言葉。照れのような気配を感じる一方、控え目ではあるのだけれど、自信のようなものをも感じる不思議。
未だに未知。ここだけ何か違う。いつ読んでもどこか新しい尾崎翠の世界。読むたびに自分は驚く。ここでしか出会えぬものの多さよ。言葉にせよ、感覚にせよ。平板な調子で、ひどく途方もない事を試みているような次第。永遠に途上であるかのように思える明かされなさ、到達しなさ。とても好き。