ひどく身近にある幸福感であり不安であり憤りであり苛立ちであり、繊細さであり柔らかさであり光沢感であり存在感であり過剰さであり安っぽさであり高級さでありケチくささであり銘柄であり選択であり組み合わせであり、配置。鮮やかに立ち上って来るそれらに、自らの心当たりを容赦なく引き出されると言う、手強い愉悦。自分が見て来たものの多さ、見て来なかったものの多さ。拘って来たものの多さ、拘って来なかったものの多さ…自分が如何に敏感であり、鈍感であったか。などの事をも、同時に思い知る次第。
本当にもう生き直しているとしか言いようがない。読む事で生き直しているとしか、自分もまたうんざりして、疲れて、苛立って、選んで、思い出して、記憶して、洗濯して、掃除して、献立を考えて、料理して、片付けて、億劫がったり、ひどく現実的で実際的で細々とした日々のあれこれに関してとりとめなく悩んだりしながら、生きているとしか。