その始まりの、その微睡みの、不穏である事、密やかである事。その冬の、その夜の、冷酷である事、暗く、深く、美しい事。その兆しの、その眠りの、緩慢である事、甘やかである事。醜い事、見苦しい事。その滅びの、その死の、抗い難い事、恐ろしい事。その終わりの、その再生の、静かである事、強く、眩く、ほのかに温かである事。物語は多くを語り、けれどそれだけではない。姿形を持たぬもの達の気配、息遣い。確かにいる。暗がりに潜み、確かに存在している。どこまでもつきまとう、それだけではないと言う感覚。物語はまだ多くを秘めていると言う感覚。言葉によって語られる事のない、姿形を与えられる事のない、それらをも含む、すべてを網羅している物語の凄み。その煌めきに惹かれる。その気迫、紛れもなく本物である事を示す物語の煌めきの、その凄まじさに。圧倒される。