漂泊している感。浮草のような。押し付けられたり居着かれてしまったりして、何となくそうなってしまった、と言う事の多さ。間違いや可笑しさや食い違いをわざわざ指摘したりどうこうしたりする気力もなくて、うんざりしてしまうし、そうやって関わる事がひどく億劫であったり面倒であったりして、そのままにしている、と言う事の多さ。青臭い強がりでも、捨て鉢気味なものでも、投げやりなものでもない倦怠感と、苦味と、満更でもなさ。と、欲望の熱っぽさ。いわゆる家族、と言うものとも縁が薄くて、出自不明である部分も多くて、割合に孤独なのだけれども、だからと言って、それをどうにかしようとする訳ではないし、そもそもどうにかしようと思う訳でもない、彼等の暮らしぶり。そう悪くないなあ、と思う。彼等にとっては、何というか、確かさと言った類のものを求めたり探そうとする、なんて事は、まったく意味のない事であるなあ、と思う。と言うか、どうでもいい事のようにも思える。そんなものに固執するなんて、ひどく馬鹿馬鹿しいし、白けるし、不毛であるし、本当に、意味なんてないのだ。
猫の気ままさの前では。気ままに、実に猫猫しく、それ以上でもそれ以下でもなく、猫であるままに生きている、タマちゃんの前では。本当に、どうでもよいし、そう言う事ではないし、そんな彼等の暮らしぶりも、そう悪いばかりのものではないように思える。
金井 美恵子
河出書房新社
売り上げランキング: 519,541