2019年10月4日金曜日

金井美恵子『マダム・ジュジュの家』

何と言う獰猛さ。獰猛な魅力に満ち溢れている。激しく、敏捷で、鋭い。餓えている。昂ぶっている。漲っている。まるで捕食者のそれ。ほとばしり、飛び散る色の獰猛な鮮やかさ。何もかもがそう。獰猛な喜び。獰猛なリズム。獰猛な艶かしさ。猥雑で、貪欲で、不都合で、しなやかで、熱く、恐ろしく熱く、速い。その獰猛な熱情。誰も止める事は出来ない。誰も飼い慣らす事は出来ない。自在に、闊達に飛び、舞い上がり、乱舞し、撒き散らす。達する恍惚。痛みごと喜んで浴び続ける。
兎に角若い!!戦慄する。その若さにおののく。その若さの、その獰猛な熱の、再現する事の出来なさ。酷く限定的と言うか、限られている類のものであるように思う。〈無知と盲目の情熱の所産〉である〈処女詩集〉…それってつまり、無敵なのではないか。あとがきは妙に微笑ましく、けれど詩それ自体は恐るべき激しさであり、獰猛さ。存分に放っている。奔流と化している。ギラギラと燃え盛っている。飛び散るものどもの熱い事。その速度に驚く。そのすばしっこい事、猥雑さ、鋭利である事に驚く。兎に角若い事、その熱量におののく。
眠らない、止まらない、おさまらない若さ。本を閉じた所で、眠りはしないし、眠りも近寄りはしない。そうやすやすとおさまってはくれない。本棚に入れた所で、おさまりはしない。おさめられない。



マダム・ジュジュの家―詩集 (1971年)
金井 美恵子
思潮社
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