降り注ぐ光が象徴する平穏。光溢れる空間に築き上げられた母と娘、二人きりの平穏は、脆く、危うげで、不安定なもの。彼女はこの頼りない現状に執着する一方で、一人の女として、男に愛されることを望む自ら、母親でありながら、娘よりも、男を選んでしまいかねない、自らの性、情欲を思い知らせるかのような夢の鮮明さに、苛まれている。
だが彼女の求める存在は、自らに性の悦びを与える、自らの男であって、娘の父親ではない。深く傷つけ合い、幾度疎んじようとも、父親という存在を排した光の領分において、娘は唯一無二の存在、自らの幸福そのもの。母と娘、二人きりの家族は、互いが互いの幸せで在り続けることができるよう、欠けた形がそのまま最良の形となるよう、自分たちの幸せに相応しい関係を築き上げて行く。
互いには互いだけ。息苦しさ故に、不安であるが故に、失敗し、その都度傷を負う。痛みは鈍く、なかなか治りはしない。自らを包む光の温かさに懸命にしがみつきながら、何度も何度も、過ちと後悔を繰り返す。自分たちの幸せを、最良を守り続けるための、苦しみと葛藤 。綺麗になど、出来るはずがない。逃げ出す夢の甘さに怯えながら、逃げ出せぬ現実の息苦しさを怖れながら。ぎこちなく、見苦しく、模索し続ける。
それらのいびつさを捉えた言葉は、同時に、どれだけ醜く叫び出そうとも、自らの心と向き合うことをやめない、彼女の強さをも思わせ、だからこそ、痛ましいばかりではない、快さを残す。差し込む光に照らされた、危うさを孕んだ日々の、不器用さこそが愛おしく、心は、彼女たちの歩みを見届けたいと、そう願って止まない。