2015年6月28日日曜日

シュペルヴィエル『海に住む少女』

美しく、幻想的な情景、柔らかで、真摯に響く言葉。しかし、平穏を歩み続けるために、平素意識的に見過ごしたり、素通りしたりしているものたち…不可思議なもの、不穏なもの、底知れぬわからなさを秘めたそれらの住まう空間に迷い込んでしまったような、怖さがある。
見覚えある緩やかさを保ちながら、綺麗に、残酷に、物語を満たし続けているそれら…時折ふと、覗き込んではみるものの、すぐに、これ以上近寄れないと、遠ざけてきたものたち。邂逅に浮かぶその怖さはどこか懐かしく、愛おしいもので、潤沢な寂しさを伴い、胸を淡く、染めて行く。


海に住む少女 (光文社古典新訳文庫)
シュペルヴィエル
光文社
売り上げランキング: 290,445